2020年度鳥取大学・和歌山大学合同ビジネス連携交流会(オンライン)
技術シーズの概要

発表1:アルカリ水分解装置システムのコストを実用レベルまで低減するアノード素材

鳥取大学工学部化学バイオ系学科 准教授 辻 悦司

見つかった新しい事実
再生可能エネルギーを利用した水素製造法であるアルカリ水分解において、システムコストを実用レベルまで低減することが期待できるアノード素材を開発した。
その事実による社会へのインパクト
本アノード素材を用いた大型アルカリ水電解システムが普及すれば、燃料電池車(FCV)や発電向けの水素製造コストを低減することに大きく寄与する。また、家庭の太陽光パネルでの余剰電力をその場で水素に変えて貯蔵し利用するといった新たなライフスタイルも提案できる。家庭での水素製造が可能となれば、水素の運搬コストも削減できる。
社会実装・製品展開
本アノード素材を用いたアルカリ水分解装置システム実用性検証を進めて社会実装を実現するために、本アノード素材の開発に企業の参画を期待する。
概念図

図 アルカリ水分解装置システムのコストを実用レベルまで低減するアノード素材
発表2:シリカナノ粒子への簡便な近赤外蛍光色素の固定化とタンニン酸被覆

和歌山大学システム工学部化学メジャー 准教授 中原 佳夫

見つかった新しい事実
化学的に不安定な化合物である近赤外蛍光色素を比較的温和な反応によってシリカナノ粒子に固定化できる新しい手法を開発した。さらに、粒子表面を天然物由来のタンニン酸で被覆して機能化した。
その事実による社会へのインパクト
既存の方法(化学結合による固定化)では利用できる近赤外蛍光色素が限定されるが、本手法では物理吸着を駆動力として固定化するため、比較的多くの種類の近赤外蛍光色素に適用できる。
社会実装・製品展開
近赤外光は優れた生体透過性を示し、また生体適合性の高いタンニン酸で被覆されているため、本材料は生体分析の分野での応用(蛍光センサー、蛍光イメージングなど)が期待される。
概念図

図 シリカナノ粒子への簡便な近赤外蛍光色素の固定化とタンニン酸被覆
発表3:導電性新素材の開発及び結晶構造予測

和歌山大学システム工学部材料工学メジャー 准教授 山門 英雄

見つかった新しい事実
  • フタロシアニンを主要構成要素として含む、高い電気伝導性を示す有機単結晶を作成することが可能であり、場合によっては柔軟性を示す単結晶が得られる場合もある。
  • 結晶の充填率に着目して計算機で超球面探索法を実行することにより結晶構造予測を進められる可能性がある。


図 これまでに開発された「高導電性」・「有機」・「柔軟」・「単結晶」という条件を全て満たす物質の結晶構造

その事実による社会へのインパクト
  • フタロシアニンという機能性物質(強い光吸収、耐光性、触媒機能)に導電性を持たせた単結晶素材でありながら、柔軟性を持つ等バラエティに富む電極としての用途がありえる。
  • 充填率に着目して超球面探索法を行うことにより、今日でも完全には解決されていない結晶構造予測という問題に、将来何等かの貢献をしうる。
社会実装・製品展開
  • 電池やセンサー等での電極としての使用
  • 新しい結晶構造予測法の提案、新物質開発
概念図

図 電池やセンサー等での電極としての使用例

図 新しい結晶構造予測法の提案、新物質開発(数値は原子間距離(単位:Å))
発表4:化学とバイオの異分野融合が生み出す新規光充電デバイス

鳥取大学工学部化学バイオ系学科 准教授 薄井 洋行

見つかった新しい事実
TiO2とMnO2からなる複合電極に電解液に浸漬し光を照射すると、TiO2の光電変換がMnO2上でのNa+吸着を駆動し、光充電が行えることを世界で初めて見出した。加えて、自然界の光合成から着想を得て、電子やエネルギーを運ぶ光合成物質(NADPHやATP)を電解液に添加することで、TiO2の光電変換が劇的に促進され、複合電極の充放電特性が大幅に向上する新規機構を確立した。
その事実による社会へのインパクト
化学バイオ系学科の特色を活かし、『化学とバイオの垣根を超えた異分野融合』の思想に基づき新規光充電機構を創出した。光合成において重要な役目を担うNADPHとATPが、全く分野の異なる無機材料からなる電気化学デバイスの充放電特性を劇的に向上させる知見は学術的にも大変興味深い。この新機構の確立により、人工光合成の実現が期待される。
社会実装・製品展開

新規光充電デバイスは下記のような製品展開が想定される。

  • 小型ウェアラブル機器の電源 (室内の照明や屋外の太陽光で自由に充電可能)
  • ICカードの電源
  • 太陽電池の電源

下記のような課題が残っており、企業の参画により課題を解決して社会実装を実現することを期待する。

  • TiO2の光起電力(充電電圧)の向上 → [例]高結晶性の光半導体材料の適用
  • Na+吸着量(充放電容量)の向上 → [例]多孔質もしくは微細構造を有する酸化物材料の適用
  • 小型電子デバイスに実装した場合の耐久性の評価 → [例]省電力デバイス用途を想定したキャパシタ特性の評価
概念図


図 化学とバイオの融合に基づく小型光充電デバイスの創出

電解液に浸漬したTiO2とMnO2からなる複合電極に光を照射することで、TiO2の光電変換がMnO2上でのNa+吸着を駆動し、光充放電反応を行う。

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