先進インフラマネジメント部門
Division of advanced infrastructure management
先進インフラマネジメント部門の構成員は、黒田保教授(部門長、コンクリート工学)、香川敬生教授(強震動地震学)、谷本圭志教授(社会システム工学)、黒岩正光教授(海岸工学)、太田隆夫教授(防災工学)、中村公一准教授(地盤工学)、江本久雄准教授(維持管理工学)です。先進インフラマネジメント部門では、道路、鉄道、橋梁、ダム、港湾、上下水道をはじめとする社会インフラを健全な状態でより長く利用できるように、それらのマネジメントに新技術を活用するための研究を行っています。
国土交通省の推計によると2030年には道路橋の半数以上が建設後50年経過し、さらに2040年にはトンネルや港湾施設なども建設後50年を経過するものが半数を超えるとされています。このように高齢化する社会インフラが増加する一方で、建設分野では技術者不足や予算不足の問題を抱えており、これまで通りのやり方では社会インフラを適切にマネジメントできない状況にあります。特に地方公共団体においてこの傾向が顕著に現れています。これらの問題を解決するための一つの方法として新技術の活用があります。例えば橋梁の点検にロボット技術を活用するための検討を行っており(図1)、ロボット技術を活用することにより橋梁点検の効率化と高度化を実現することが期待されています。
本部門で現在取り組んでいる活動の一例を紹介します。2023年度から始まった内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の課題「スマートインフラマネジメントシステムの構築」の中で設定された14の課題のうち「EBPM(Evidence-Based Policy Making)による地域インフラ群マネジメント構築に関する技術」に株式会社大崎総合研究所、株式会社アイ・エス・エス、鳥取県との共同で取り組んでいます(図2)。研究課題は「EBPMに基づく地域橋梁群のマネジメントシステムの構築」で、鳥取県が管理する橋梁のデータプラットフォームを作成し、橋梁群のマネジメントシステムを構築・実装するものです。この橋梁群マネジメントシステムでは、データプラットフォームに格納されたデータに基づいてシミュレーションを行い、道路ネットワークにおける橋梁群の維持管理区分マップを作成します。この維持管理区分をもとに限られた予算や人材の範囲内で橋梁群に対してメリハリのある維持管理を行い、鳥取県内の橋梁の安全性を確保します。SIPでは単なる技術開発だけでなく、その技術を実装するために、「技術を開発する」、「制度を整える」、「事業化を図る」、「社会的受容性を図る」、「人材を育成する」の5つの視点で事業を進めることになっています。これらの中で、新しい技術が有効に使われるためにはその技術を使う人材の育成が重要であり、それができなければその技術を適切に実装することはできません。本部門では新技術を社会実装するために人材育成の方法についても検討しています。
以上のように、本部門では特に地域の社会インフラの安全性を確保するために、インフラのマネジメントに新技術を導入するための活動を行っています。